市民の皆様への情報

研究終了のお知らせ

2023年より実施しておりました本観察研究につきまして、事例登録の対象期間を2023年7月から10月までとし、2024年1月までに各参加団体からのデータ登録を完了いたしました。現在、データの解析を終え、令和5年度末に厚生労働省への報告を予定しております。研究参加団体(消防本部等)および関係機関の皆様、ならびに地域の皆様のご協力に深く感謝申し上げます。
(2024年3月27日)

アナフィラキシーに関する観察研究

 ご自宅や野外等で、食物や虫刺されなどによってアナフィラキシーが起こると、急速に症状が悪化し、ときには亡くなってしまうことがあります。

 アナフィラキシーを起こした患者さんに対しては、できるだけ早くにアドレナリンを投与する治療が有効となります。

 救急救命士がアナフィラキシーが疑われる救急現場にかけつけた場合には、法令上、エピペン®(アドレナリンの自己注射薬)を用いたアドレナリンの投与が認められていますが、現状では、その患者さんがアナフィラキシーと診断されて医師からエピペン®の処方を受けていて、ご本人が持っているエピペン®を用いて投与する場合に限られており、処方されたエピペン®を持っていない場合や、そもそも処方されていない場合は対象となりません。

 これは、不用意なエピペン®投与による副作用の懸念があるからですが、かといってアナフィラキシーショックの状態の患者にエピペン®を投与しないままに医療機関まで時間をかけて搬送している間に、症状がさらに悪化し、不幸な結果になることもあり得ます。

 救急現場で正しくアナフィラキシーを判断し、アドレナリンが投与できれば、そうした症状の悪化を防ぐことができるかも知れません。

 そこで、検査などのできない救急現場であっても、救急救命士がアナフィラキシーを正しく判断し、アドレナリンの投与の必要性を適切に判断できるかどうかを評価するために、実際の救急現場においてアナフィラキシーが疑われる事例で、救急救命士によるアナフィラキシーの判断と、アドレナリンの投与必要性の判断(実際には投与しませんが)を行った記録を収集し、同じ事例について病院で医師によってなされた診断の情報収集も行って、その結果が合致するかどうかなどを分析・比較する「観察研究」を行うこととしました。

【研究参加消防本部の地域のみなさまへ】

本研究は追加で処置などを行うものではなく、通常の救急活動には影響ありません。

消防機関等が研究に参加している地域では、救急搬送された際にアナフィラキシーが疑われてる傷病者の方について、症状や意識状態・血圧、医療機関での診断結果と治療や回復の経過等のデータが研究データとして提出されます。ただし氏名などの個人が特定される情報は提出されません。

もし、傷病者の方がこの研究による情報の提出を希望されない場合、研究に参加している消防本部等にご連絡いただければ、いつでもお断りいただくことが可能です。その場合、不利益などは一切ありません。

※研究に参加している消防本部等については、本ページ下部の記載をご覧ください

アナフィラキシーと本研究についてのQ&A

Q:アナフィラキシーってなんですか?

A:アナフィラキシーは、急性のアレルギー反応によって、皮膚や呼吸器、消化器など複数の臓器にさまざまな症状が急速に出る状態です。アナフィラキシーのうち、血圧が低下したり、意識がなくなるなど生命の危機的な状態に陥っている状況をアナフィラキシーショックといいます。

Q:日本でのアナフィラキシーで死亡例はどれくらいありますか?

A:厚生労働省の統計では、毎年50~70人の死亡例があるとされています。死亡例以外を含めたアナフィラキシー全体の原因でもっとも多いのは食物によるものですが、死亡まで至る場合の原因としては、食物よりも薬物やハチ毒が多いとされています。発生してすぐに適切な処置できれば救命できた事例もあるかもしれないと考えられています。

Q:適切な処置とはなんですか?

A:アドレナリンという薬剤が特効薬とされていて、決められた量、決められた方法で投与することで非常に効果があることがわかっています。アナフィラキシーを起こす危険がある人に対しては、自己注射可能なアドレナリン製剤(エピペン🄬)が医師から処方されていることがあります。

Q:救急救命士はアナフィラキシーにアドレナリンを投与できないのですか?

A:救急救命士は、エピペン🄬を処方されている人(上記Q&A参照)にアナフィラキシーが起きた時に、その人がエピペン🄬を持っていれば、そのエピペン🄬を代わりに注射することが認められています。しかし、初めてアナフィラキシーとなった人などでエピペン🄬を処方されていない場合には投与できないため、できるだけ早期にアドレナリンを投与できるかどうかを検討するために本研究を行うことになりました。

Q:救急救命士はアナフィラキシーの患者には、なにもできないのですか?

A:酸素投与や人工呼吸など、アドレナリン投与以外の処置の実施は現在でも認められています。また、血圧が低下してアナフィラキシーショックになった場合には、医師と連絡をとって指示を得たうえで点滴などの処置を行っています。

Q:この観察研究ではどんなことをするのですか?

A:この観察研究では、実際にアドレナリンを投与することはありません。研究に参加している救急救命士が、搬送する患者さんをアナフィラキシーと判断した、または疑った場合、アナフィラキシーの判断やアドレナリン投与の必要性の判断、搬送された病院での医師の診断結果などのデータ収集して、その相違などについて分析を行います(観察研究といいます)。また、バイタルサイン(意識状態や血圧など)の変化などのデータも収集します。このため、病院で行われた治療経過などについて病院から伺う場合もあります。

Q:通常の救急搬送に影響はないのですか?

A:本研究はデータを収集するのみであり、救急活動や搬送などは通常どおりに行われます。

Q:救急搬送された場合に、私の患者情報は研究に使ってほしくないのですが、断ることはできますか? またそのときに何か影響はありますか?

A:最寄りの消防署に申し出て頂ければ、いつでもお断りいただくことが可能です。また、お断りされても、まったく不利益は生じません。

Q:この研究は、全国で一斉に行われるものなのですか?

A:本研究では、地域メディカルコントロール協議会という、医療機関、医師会及び消防機関などで組織された救急医療の協議会が主体となり、その地域の救急救命士の方に参加をしていただきます。また、地域において消防や病院による協力が可能であることや、研究の実施にあたっての救急救命士の講習などが可能であることを条件として、可能な地域に参加をいただくため、全国で一斉に行うものではありません。

 ただし、この観察研究に参加していない地域において、消防や病院の協力体制がなかったり、救急救命士の講習が不足しているというわけではありません。

本研究の実施組織について

本観察研究は、厚生労働科学研究費補助金研究事業「救急救命士が行う業務の質の向上に資する研究」(研究代表者:帝京大学 坂本哲也)の一環として、厚生労働省や消防庁からの助言を得て実施されます。

研究参加団体(消防本部等)一覧

救急搬送された場合にこの研究への傷病者情報の提供を希望されない場合、お断りいただくことが可能ですので、お住まいの地域の消防本部等へご連絡ください。